酣燈社:樋口敬二著 税込み定価2,484円(本体価格2,300円)
米国人のディック・ルタンとジーナ・イェーガーが1986年12月、複合材料で作った双発軽飛行機を操縦して、九日間の世界一周に無給油・無着陸で成功した。名古屋で開かれた89年の世界デザイン博覧会では、その実物大模型が展示された。本書は、ボイジャーの魅力を、その設計思想や設計者、パイロットたちの思いを通して描いた。
著者は、小学校のころから飛行機にあこがれ続け、研究者になっても飛行機による雪渓、氷河などの調査に飛び回った名古屋大名誉教授。
人類は「より遠く」「より高く」「より速く」を目指して多彩な飛行を展開してきたが、その最大で最後の記録といわれていたのが、無給油・無着陸世界一周の飛行でありそれに成功したのが長距離機「ボイジャー」であった。
そこに至るまでにどれだけ多くの飛行家が挑戦しそのためにどんな飛行機が開発されたか、この本はそんな人と機体の物語である。
第1部 無給油・無着陸世界一周飛行へのチャレンジ(「ひと・夢・デザイン」:ボイジャー計画の報道)
第2部 ボイジャーとはどんな飛行機か(特殊長距離機・ボイジャー:長距離機の系譜、ほか)
第3部 最後の偉大な世界記録(ボイジャーを見て:飛行のコースと時期・最良ではなく最悪、ほか)
第4部 ボイジャーと日本(ディックとジーナの訪日;デザイン博にボイジャーの展示を、ほか)
【著者略歴】
樋口 敬二
雪氷学者。1927年朝鮮で生まれ、京都で育つ。
旧制・三高時代に氷の実験を試み、1949年、中谷宇吉郎門下となるために北海道大学に進み、大学院修了後、同大助教授として航空機を使って石狩平野の降雪雲を観測し、「紙の雪」の撤布実験などを行う。
1966年、名古屋大学教授となり、現地調査・航空機によって雪渓・氷河・永久凍土などを観測し、地球温暖化の影響に関する先駆的研究を進めた。
1961年名大を定年退官後は、中部大学教授、名古屋市科学館館長を務め、現在は名古屋大学名誉教授。
日本気象学会賞、日本雪氷学会賞、紫綬褒章等を受賞。
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