航空機の燃料 航空機が使用する燃料には、大きく分けるとピストンエンジン(オットーサイクル)が使用するガソリン系燃料とジェットエンジンが使用するジェット燃料に区別される。
ガソリン系燃料は小型機、大型機そして特殊航空機(レース機や戦闘機)用と、エンジンの圧縮比などにより使い分けている。
(第一石油類、危険等級2) 80オクタンから145オクタンまで5種類があり、世界共通規格で使われ、自動車用ガソリンとの違いは、添加剤と4エチル鉛が多量に混入されている事である。
ジェットエンジンの燃料は、国際標準規格で4種類に区分されている。 1. JP-4=ナフサとJET-A1を混合した燃料で、おもに軍用ジェット機が使用している。 2. JP-5=航空母艦に発着するジェット戦闘機が使用しており、高引火点(61℃以上)の燃料である。 3. JET-A=主に米国内で使用されている民間ジェット機用の燃料である。 4. JET-A1=民間旅客機や小型ジェット機が使用する燃料で、引火点38℃以上、析出点47℃以下で第二石油類に区分され危険等級3と比較的安全なものである。 ※ ナフサ=原油を蒸留する時、ガソリンの沸騰点範囲である25~200℃で留出する部分。(≒ガソリン) ※ 析出点=液体から結晶が分離して出てくる温度。(Fuel Freezing Point≒凍結温度)
民間ジェット旅客機が使用するJET-A1燃料の主成分は、99%が灯油(ケロシン)である。 これに酸化防止剤、氷結防止剤や腐食防止剤などの添加物が加え使用されている。 ジェット燃料の搭載は、容量(リットルやガロン)でなく重量(Lbs=ポンド)で搭載される。 これはジェット燃料特性で、温度により容積が変化する為である。 容積で給油すると、アラスカの大気温度(氷点下40度)で入れた1リットルとハワイ(35度)で入れる1リットルの容積は異なる。 ジェット機は大容量を搭載する為、その変化は大きい。 そこで重量で給油すると、同じ質量(熱量)が搭載でき、上記の問題(膨張)が解決できる為である。
高空では外気温度がマイナス56度にもなることから、エンジンへ入る寸前の燃料をエンジンオイルで暖めている。 この装置はFuel Oil Heat Exchangerと言い、エンジンオイルの冷却と燃料のヒーティングを兼ねている。
旅客機の燃料搭載量は、必要分しか搭載しない。 航空法で定められている燃料搭載量は、地上滑走で使う量+目的地までの量+代替空港までの量+コンテンジェンシィーの合計である。 ※コンテンジェンシィー(燃料補正量)=目的地へ向かう最終巡航時の消費量の10%、または目的地上空1500Ftの高度で15分間飛行できる量のどちらか多い方。
余分な燃料を搭載すると飛行機重量が増え、重量が増えた分だけ燃費が悪くなる為に更に燃料を積まなくてはならなくなるのである。 以上のことからジェット旅客機は満タンで出発する事は決してない。 長距離路線で目的地の天候が悪く、近くに代替空港が選定できない場合、燃料搭載量が膨大になり離陸重量オーバーになり搭載貨物を下ろすこともある。
B767の燃料タンクは左右の主翼の中に2個ずつあり、全容量は、長距離機で169,832Lbs(ポンド)も搭載できる。 この燃料量を常温でドラム缶に詰めると507本になる。 この燃料重量はB767最大離陸重量の42%にもなり、満タンで飛行する事がいかに不経済か分かる。
またジェット燃料(灯油)の発火温度は高く、通常の状態では燃えた焚き木を放り込んでも燃えたりしない。 焚き木の火が燃料に触れ際に、一瞬に消えてしまう。 しかし、空気と混ざった状態(噴霧状)では火がつきやすく、燃焼速度も早くなり爆発してゆくように見える。
ジェットエンジン内では、コンプレッサーブレード(扇風機の羽状)が21段あり、これで取り入れた空気を30倍(420Psi)に圧縮している。 この高温圧縮空気にジェット燃料を勢い良く霧状に噴射して燃焼(爆発ではない)させている。
チャンバー(燃焼室)の温度は、1400℃にもなり、エンジン後方のチタンブレードは高温にさらされる為、内部に空気が流れるようになっている。 この冷却空気でブレードが熱で解けないようにしている。
テロ事件のように高速でビルに衝突すると、燃料タンクが炸裂し瞬間的に飛び散った燃料は噴霧状となる。 飛び散る速度(衝突速度)が高速なほど燃えやすい状態が作られる。 これにエンジン炎や金属が接触した際の火花が引火すると、爆発したかのような速さで燃焼してゆく。
B767-300ER(長距離機)にはFuel Jettison(燃料放出)があり、1分間に2500Lbs燃料を空中に捨てる装置がついている。 これは長距離飛行の場合、最大着陸重量を遥かに越えた重量で離陸してゆく、離陸後すぐに何らかの事情で着陸する(引き返す)場合に燃料を放出して重量を減らす為の物である。
羽田千歳間で300人を乗せて飛行する場合、一人当たり約24リットルの燃料を使う。 B767の燃料消費量は、長距離を飛ぶほど良くなる。
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